第二章

2/31
前へ
/311ページ
次へ
 そこでクラウスは婚約解消通知書を国王の前に差し出した。 「なんだ、これは……」  その紙切れに視線を落とした国王の顔色はみるみるうちに変わっていく。興奮して赤かった顔は白くなり、一気に真っ青になる。 「お前というやつは……。なんてことをしてくれた」 「私には好きな女性がいます。彼女は私の子を身籠っています」  国王の口の端がピクリと動く。 「誰だ」 「え?」 「お前の子を身籠ったのは、誰だ」 「アデラです。アデラ・フロイド」 「腹を切り裂け」 「えっ」 「腹を切り裂いて、お前の子を引きずり出せ」 「父上。何をおっしゃっているのですか。そのようなことをしたら、アデラと子供は死んでしまうではありませんか。私は彼女を私の正妃にしたいのです」  ジロリと国王はクラウスを睨みつける。 「どこの馬の骨かわからん女に、お前の正妃が務まると思っているのか。お前の正妃。すなわち、未来の王妃だ」 「アデラは馬の骨などではありません。フロイド子爵家の立派な令嬢です」  チッと国王は舌打ちをする。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1580人が本棚に入れています
本棚に追加