第二章

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 チッと国王は舌を鳴らす。なぜこのタイミングで、学校の教授が転移魔法を使い、自国へと戻ったのか。だが、彼がファンヌの師であったことに気付く。  まさか――。 「どうやら、キュロ教授はファンヌ・オグレン嬢を連れて転移したようです」  ◇◆◇◆  突然、視界に広がる世界が変わった。  先ほどまでは学校の屋上にいたはずなのに、目の前に広がるのは緑色が八割を占める薬草園。太陽の日差しは柔らかく、薬草たちを眩しく照らしている。 「うわぁ。ここがベロテニアなのですね。転移魔法を体験したのも初めてです。って、転移魔法って、簡単に使えるものじゃないですよね。高等魔術ですよね。先生って何者なんですか?」  ファンヌが隣にいるエルランドを見上げて尋ねると、彼は風によって弄ばれる前髪を押さえながら、ふっと笑っただけだった。 「それよりも、これが国で管理している薬草園だ」 「転移先がいきなり薬草園っていうのも……。先生って、私のことをよくわかっていらっしゃるのですね。ですが、荷物、どうしましょう?」
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