第二章

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 今からでもすぐにこの薬草園を見て回りたい、そんな気持ちが溢れてくるファンヌの口調である。だが、荷物が邪魔だった。  ファンヌの荷物はトランク二つ分。そのうちの一つは研究に必要な書籍や道具類が入っている。もう一つのトランクが、必要最小限の着替えだ。それ以外のものは現地調達をしようと思っていた。 「オレの屋敷はすぐそこだから。まずはそこに向かう」  エルランドが指を差したすぐそこには、クリーム色の建物が並び、その奥には王宮のような建物が見えた。 「もしかしてこちらの薬草園は、王宮管理の場所ですか?」 「そうだ。ベロテニアは薬草と茶葉の生育に力を入れている。だから、王宮としてもこれだけの薬草園を管理している。あっちの方で栽培しているのが茶葉だな」  ファンヌの顔が輝いて見えるのは、けして太陽の光を浴びているからではない。この薬草園を見て興奮している様子が、表情に出ているだけ。 「先生。早く荷物を預けて、薬草園を案内してください。一日で回りきれますか?」 「それは君次第だろうな」  エルランドはファンヌの荷物のうちの一つ、研究に必要な物が入れられている重い方のトランクを手にした。
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