プロローグ

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「わかった、ファンヌ。今から僕と一緒に神官長の元へ向かおう」  神官長とは神事を執り行う神官たちをとりまとめている者であり、王宮から少し離れたところにある神殿にいる。この神殿は貴族の婚姻や出生などを管理している。そのため、今、サインをした書類を神殿に提出しなければ意味がない。  二人は王宮の敷地を出て、神殿へと向かった。隣の敷地であるため、歩いて行ける距離でもある。  二人で最後に歩きたいとファンヌは口にした。  ファンヌの隣にいるのは王太子だ。恐らく、ファンヌの気付かぬところに彼の護衛はいるのだろう。  つまり、クラウスと一緒になるとは、そういうこと。どこからか誰かから見張られている世界。それを考えるだけでも、ファンヌは息が詰まりそうになっていた。  妊娠初期であるアデラは、部屋で休んでいると言った。その部屋も、彼女の妊娠がわかってから、クラウスが用意したものらしい。  残念ながらファンヌは、王宮に専用の部屋を持っていない。  ファンヌがクラウスと共に神殿を訪れ、神官長に書類を手渡すと、彼は驚いたように口を開けた。だが、すぐに平静を装い、書類を受け取る。
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