第二章

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 ファンヌだって侯爵令嬢。リヴァス王国王太子の元婚約者。この屋敷がどれだけ手入れが行き届いていて、派手ではないけれど手の込んだ内装であることくらい、見ただけでなんとなくわかる。階段に敷き詰められている赤い絨毯も(ちり)一つ落ちていない。この手すりのバラスターもねじり型で、凝ったデザインだ。職人の腕の良さがよくわかる。 「こちらのお部屋になります」  ショーンに案内された部屋は、とても日当たりがよかった。外側にある両開きの雨戸は開け放たれていて、外光を取り込み、シナモン色の床を温かく照らしていた。寝台も広く、淡いコスモス色のソファもある。 「うわぁ。素敵なお部屋……」  それはファンヌの心からの声であった。 「気に入ってもらえてよかったよ。隣がオレの部屋だから、何かあれば声をかけてくれ」 「ところで、先生。あの扉はなんですか?」  ファンヌは部屋の内扉に気が付いた。廊下に通じる扉とは違う、部屋の中にある扉。もしかして、隠し部屋だろうか。 「オレの部屋と通じている……」 「えっ。えぇええええ!」 「坊ちゃん……。大事なことはきちんと伝えましょうね」
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