第二章

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 ファンヌはいつものシャツとトラウザーズという姿だ。 「坊ちゃん。きちんと言葉にしないと伝わらないことだってあります」 「わかった……」  とエルランドが呟いた。 「ファンヌ。申し訳ないがこの後、紹介したい人がいる」 「え、と。こちらの方たちではなくて?」 「違う。オレの家族だ。ここではないところにいるから、着替えて欲しい」 「え、薬草園は?」 「その後だ。むしろ明日だ」 「え、えぇええ。楽しみにしていたのに……」  ファンヌが悲しみの声をあげると、またショーンから「坊ちゃん……」と呟きが聞こえてきた。 「ファンヌ様。お着替えはこちらで準備させていただきました」  クローゼットを開けると、普段使いのワンピースとドレスがいくつか並んでいた。どのデザインも明るく柔らかい中間色のもので、控えめなものが多い。派手ではないが、それでも良質な布地を用いられていることくらい、ファンヌにだってわかる。 「では、今。侍女を呼んでくる。着替えが終わったらサロンでお茶にしよう」 「薬草園……」 「明日、案内してやるから、今日は我慢してくれ」 「薬草園……」
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