第二章

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 だが、興奮して国王の話が耳に届いていないのか、エリッサと呼ばれた少女はファンヌの方に歩み寄ってきた。 「あなたが、エル兄さまの番の方? 私、エリッサ。よろしくね」  ファンヌの両手をとった彼女は、ぶんぶんとその手を振り回してから、席についた。  ファンヌの聞き慣れない言葉が彼女の口から飛び出していたため、エルランドに確認したかった。だが、彼は顔を赤らめているし、国王も王妃も難しい顔をしているし、少し離れた場所にいる王子たちは突然現れた少女を宥めているし。  ファンヌはどうしたらいいかがわからなかった。 「ファンヌ嬢。失礼した。まだこちらの紹介が終わっていなかったな」  国王はファンヌの困惑に気付いてくれたのだろう。穏やかな笑みを浮かべながら、この場にいるエルランドの関係者を紹介し始めた。  エルランドには兄が二人と妹が一人いるようだ。妹というのが、最後に現れた少女――エリッサで、年はファンヌよりも一つ下の十七。年齢も近いことと、先ほどの好意的な印象から、仲良くなれそうな気がしていた。少し暴走気味なところもあるようだが、それすら微笑ましいと思えてしまう。
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