第二章

22/31
前へ
/311ページ
次へ
「獣人の血が濃いということは、獣人の特徴も強く持つということだ。それの一つが『運命の番』と呼ばれるもの。獣人は特別な相手が本能的にわかる特徴を持つ。だから、身分や国籍など関係なく、生涯の相手には『運命の番』であることが何よりも尊重される。昔は『番』を伴侶にしなければ、気も狂ってしまうほど深い繋がりがあったとされているが、今は血も薄れているため、相手が『番』であるかどうかわかる程度の力しかない。だから『番』を伴侶としなくても、気が狂うこともない。そうだな、一目ぼれ的な強い衝動が訪れると言った方がわかりやすいだろうか」  ようするに、結ばれるべき相手がすぐにわかるのだろう。だが、その相手を手に入れることができなくても、ただの失恋で済む。そういった話に聞こえた。 「素敵なお話ですね」  ファンヌは心からそう思った。自分の相手は、権力と政略によって決められた相手だった。だからあのままクラウスと結婚をし、子を授かったとしても、その子を愛せるかどうかの不安があった。だが、それはもう過去の話。 「もしかして、陛下も」 「そうだ」
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1587人が本棚に入れています
本棚に追加