第二章

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 ゆっくりと頷く国王と王妃が羨ましく見えた。ファンヌが視線を二人の王子に向けると、彼らも頷く。 「私は、残念ながらまだよ」  聞いてもいないのに、エリッサが唇を尖らせて答えている。  そして最後にエルランドを見る。彼は先ほどからファンヌの方を見ようとはしない。 「ファンヌ嬢。どうか驚かないで聞いて欲しいのだが」  こういった前置きをされる場合は、これから驚く話をするぞ、というときによく使われる。それは『研究』の成果を発表する場でも用いられる手法であるため、ファンヌにとっては耳慣れた言葉でもあった。 「どうやらファンヌ嬢が、エルランドの『運命の番』とのことだ」  驚くな、と言われていなかったら驚いていた。間違いなく「え、えぇえっ」と声を上げていた。ファンヌはその言葉を飲み込み、ただじっとエルランドを見つめる。  彼は目を合わせてくれない。耳の下まで赤く染め上げて、俯いていた。 「ごめんなさいね。ファンヌさん。昔からこの子はこういうことに奥手で……」 「あ、いえ。突然のことで驚いただけです」 「ある意味、エルはすごいな。黙って彼女をここまで連れてきたわけだ」
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