第二章

27/31
前へ
/311ページ
次へ
 ランドルフの言葉でファンヌは思い出した。クラウスの婚約者であったことを綺麗さっぱりと忘れていた。それだけ彼女の心の中では、無かったことにしたかった案件のようだ。  一国の王太子の婚約者であったのに、浮気相手が子供を授かったから捨てられた女だ。そのような自分がベロテニアの王族の相手として相応しいとも思えない。  ゆっくりと口を開いたのは国王だった。 「ファンヌ嬢。先ほども言ったが、我々の相手は何よりも『番』であることが優先される。君にどのような過去があろうと、エルランドが認めたのであれば、気にする必要はない。むしろ、エルランドはこんな性格だからね。君のような女性がエルランドの手綱を握ってくれると、こちらとしても非常に助かる」  国王の言葉は穏やかでありながら、重みがある。そして、優しさも滲み出てきた。リヴァス国王と同じ国王とは思えないほどに。  王妃もにっこりと微笑んだ。 「それにね。エルランドはローランドの臣下として、この王宮で王宮薬師として働くことが決まっているのよ。もしよかったら、あなたも王宮調茶師としてここで働いてみたらどうかしら」
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1586人が本棚に入れています
本棚に追加