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二人の話を黙ってきいていたファンヌは、エルランドの腕を手でとんとんと叩いた。先ほどから口元を塞がれているため、少し息苦しいのだ。
「はぁ……。先生、苦しかったです」
「す、すまない……」
またエルランドは身体を小さくする。
「で、先生。私はこちらで先生のお手伝いをすればよろしいですか? よろしいですよね」
ファンヌにそこまで言われてしまったら、エルランドも拒否することができない。
「そ、そうだな……。頼む……」
もちろん彼はファンヌに弱い。それは彼女が彼の下で研究を始めた当初からである。
理由は明確である。それにファンヌも気付いた。
彼女がエルランドの『番』だからだ。彼女に嫌われたくないという気持ちが、彼をそうさせているのだろう。
だけど、ファンヌはエルランドのその気持ちを利用するつもりは無かった。今までと同じように接しているつもりだし、これからもそうするつもりであった。
「まぁ。仲が良いみたいで、嬉しいわ」
目の前の王妃が、ころころと陽だまりのように笑っていた。
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