第三章

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 だが、彼女の出した答えは「いきます」だった。  こうしてエルランドは『番』であるファンヌを連れてベロテニアと戻ってきたのだが、残念ながら彼女に『番』については伝えていなかった。言えなかった。  兄たちから『ぽんこつ』と言われても仕方ない。  だからといって、彼女を騙してここまで連れ帰ってきたわけではない。彼女の両親には許可を取ってあるし、彼女の両親は()()()()を知っている。  ファンヌが「ベロテニアへ行きます」と宣言した次の日。  エルランドは早速彼女の両親と会った。昼前に約束を取り付けたら、その日の夕方に屋敷に来るようにと連絡があった。  逸る気持ちを抑えて、彼女が暮らしている屋敷へと向かった。そこでエルランドを待っていたのは彼女の両親と兄の三人であった。ファンヌは今日、エルランドがここに来ることを知らないようで、部屋にこもっているとのことだった。さらに部屋の前で侍女が見張っているため、この場には来ないというのが、彼女の父親であるヘンリッキの話である。どうやら、彼女には聞かせたくない話のようだ。エルランドにとっても都合が良かった。
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