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『ファンヌ嬢をベロテニア王国へ連れていく許可をいただきに参りました』
ヘンリッキは、観察するかのようにじっとエルランドを見つめていた。まるで値踏みをされている気分だった。この男は娘の相手に相応しいのかと、じっとりとした視線を感じた。
『キュロ教授は、父親に似ているとは言われませんか?』
ヘンリッキの表情が和らいだ。
『父を……。ご存知でしたか』
『私も仕事柄、様々な方とお会いしますから』
つまり、ヘンリッキはエルランドの真の身分を知っているのだ。
『キュロ教授でしたら、安心して娘を任せることができます。ところで、娘は教授の運命であると、そう考えてよろしいのでしょうか?』
さすが王宮医療魔術師なだけあり、頭の回転が早い。
『はい……。まだ、伝えておりませんが……』
『キュロ教授。あの娘は婚約を解消したばかり。今、その話をしても受け入れることは難しいと思います』
そう言葉を放ったのはファンヌの母親であるヒルマだった。さすが彼女の母親だなと、このときエルランドは思った。
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