第三章

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『教授。兄の私が言うのはなんですが。とりあえず、ファンヌのことは『研究』で釣っておいてください。そうすれば、あとは時間が解決してくれると思います』  エルランドにとっては追い風だった。オグレン侯爵家の全てが、彼の背を押している。 『いやぁ。実は我々も本日、退職届を突き付けてきましてね。領地に戻ることにしました』  あっけらかんと報告するヘンリッキにエルランドは目を丸くした。 『そろそろ領地に戻らねばとは思っていたのですが。あのままファンヌだけを王都に残しておくのも不安で。彼女が結婚をして、しばらくしたら戻ろうと思っていたのですがね。まさかの婚約解消。これで私たちをここに縛り付けておく理由が無くなったわけです』 『どうせなら、陛下が戻ってくる前にさっさと戻ろうという話になりましてね』  ヒルマの微笑む姿は、ファンヌによく似ている。 『私たちの仕事はどこでもできますし、むしろ領民たちの役に立つのであれば、それこそ本望です。まだ父の元で教えていただきたいので、私も父についていくことにしたのです』
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