第三章

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 一見、妹と似ていないように見える兄のハンネスであるが、ふっと笑った瞬間はファンヌに似ているように見えた。 『そういうわけです、キュロ教授。どうか娘のことを頼みます』  彼らはエルランドに向かって深く頭を下げた。エルランドも「お預かりします」と答えた。 『あ。そうそう、キュロ教授。一つ、お願いしたいことがあるのですが……』  そう言って話を切り出したヒルマ。彼女のお願いしたいことを聞いたエルランドは、間違いなくヒルマはファンヌの母親であると、そう思った。  ◇◆◇◆  瞼の向こう側を光によって叩かれ、ファンヌは目を開けた。 (そうか……。私、ベロテニアに来たんだ……)  どうやら昨日、雨戸を閉め忘れたようだ。カーテンの隙間を拭うように、朝日が部屋の奥に入り込んでいる。  カーテンをそっと避けて窓から外を眺めると、下に広がる薬草園が視界に入った。ところどころ、人が固まっているのは薬草を摘んでいるのだろう。一般的に、薬草は昼前の涼しい時間に摘まれる。日中の暑い時間に摘んだ薬草は長持ちしないと言われているためだ。 (朝食の時間まで、まだあるわ。少し、散歩してきてもいいかしら)
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