第三章

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 ファンヌは寝間着を脱いで、適当なワンピースに着替えた。若草色のワンピースになったのは、それが一番手前にあったからだ。  そっと部屋の扉を開け、廊下に出ようとするとぬぅっと目の前に人影が現れた。 「うわっ。おはようございます、先生。どうされたのですか?」  ファンヌの部屋の前に立っていたのはエルランドだった。 「ああ、おはよう。朝の散歩に誘いにきた。昨日、君を薬草園に案内できなかったから。この時間なら、薬草摘みの者もいるから、必要なものがあれば分けてもらえる」  眼鏡を押し上げながらエルランドは答えた。 「なるほど。やはり王宮管理の薬草園ですから、勝手に薬草持ち出すのは……。良くないですよね」 「この屋敷の庭にも薬草はある。オレが『研究』のために管理していたものだ。長く不在にしていたが、オレの師もそこを利用しているから、整備は行き届いている」 「うわぁ。どうしよう。どちらも魅力的なんですが」  王宮管理の薬草園と、この屋敷の薬草園。どちらを先に見ようかを、ファンヌは悩んでいる。 「薬草の数でいったら王宮管理だ。こちらは研究用だからな。種類としてはこちらの方が多い」 「う~ん」
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