第三章

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 ファンヌは悩んだ。悩んだ挙句、王宮管理の薬草園を案内してもらうことにした。薬草摘みが昼前にしかいないこと。珍しくはないけど一般的な薬草が手に入りそうなこと。この庭の薬草園はいつでも足を運ぶことができること。そういった理由からだ。 「散歩してくる。朝食の時間までには戻る」  エルランドがショーンに告げると、彼は満面の笑みで「いってらっしゃいませ」と頭を下げた。  朝日が目に染みる。 「昨日はよく眠れたか?」 「はい。おかげさまで」 「そうか」  基本的にファンヌとエルランドの会話なんてそんなものだ。エルランドの言葉が圧倒的に少ない。だが相手がファンヌであればまだいい。他の研究生の場合、ファンヌが間に入らないと会話が成り立たないときもあった。よく研究生が逃げ出さなかったな、と今になってファンヌは思う。 「先生。王宮管理の薬草園で栽培された薬草は、どうするんですか?」 「『調薬』されて、市場に出回る」
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