第三章

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「おはようございます。エルランド様が調薬師としてこちらにお戻りになられるというのは、本当だったんですね。昔とお変わりなく、すぐにわかりました」  腰を折って、薬草を摘んでいた年配の女性が顔をあげた。 「悪いが、その薬草を少し分けてもらえるか?」 「エルランド様からそう言われたら、私どもはお断りできませんよ。どうぞ、好きなだけ持っていってください」  薬草摘みの女性はファンヌにも気付いたようで、ペコリと頭を下げた。 「オレの手伝いをしてくれることになったファンヌだ。これから薬草園にも顔を出すことになるだろうから、覚えておいてくれ」 「ファンヌ・オグレンです。よろしくお願いします。調茶を専門としています」  薬草摘みの女性は始終ニコニコとしながら、エルランドとファンヌのことを交互に見ていた。その視線から、嫌われていないことだけは感じ取ることができて、ファンヌはほっと胸を撫でおろした。  朝の散歩の時間だけで、薬草園を全部回るというのは土台無理な話である。屋敷から一番近い場所にあったごく一部の薬草だけを見て、二人は戻ってきた。 「先生。昨日の紅茶の茶葉を分けてもらうことはできますか?」
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