第三章

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(きっと、慣れない場所にいるから緊張しているのね。後で、気持ちが落ち着くお茶でも飲もう) 「よし。じゃ、早速行こう」  エルランドはファンヌの右手首を掴むと、意気揚々と部屋を出ていった。  昨日と同じように王宮へ向かっている。 「本当は、君がもう少し落ち着いてからの方がいいかとも思ったのだが。手持無沙汰のように見えたからな」  ファンヌの右手はいつの間にかエルランドにしっかりと握られていた。 「そうですね。まだ慣れないところはありますけど。もしかしたら『研究』に没頭できたほうが、気持ちは落ち着くのかもしれません」 「やはり、ファンヌだな」  王宮の方へ向かう橋を渡る。 「あ」  思わずファンヌは声をあげた。 「てっきり、この川は王宮を守るためだと思っていたのですが、薬草園に水を供給するためのものなんですね」 「そうだ。この川はあそこに見えるノスカ山の雪解け水が流れてきている。だから、薬草を育てるのに適しているんだ」 「雪解け水。てことは、あの山には雪が降るんですね」 「そうだ」  リヴァス王国は年中穏やかな気候であるため、雪は降らない。だからファンヌは雪を見たことが無い。
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