第三章

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「ここにも雪が降るんですか?」 「どっさりと積もることは無いが、うっすらと降ることはある」 「私、雪を見たことが無いので楽しみです。あ、そうか。だから、こちらで栽培されている薬草の種類が違うのか……」  こうやってファンヌがぶつぶつと独り言を呟くときは、頭の中で『調茶』に必要なことを考え始めた証拠だ。そんな時、エルランドは黙って見守るだけ。  こんな彼女は、歩くときもどこを歩いているかわからないような状態である。  以前も、あるお茶の効能について考察しながら歩いていたら、階段から足を踏み外して三段ほどお尻をついて落ちたことがあった。そのとき、側にエルランドがいたから良かったものの、彼がいなかったらついていたのはお尻ではなく頭であった可能性も否定できない。  だが今はエルランドが彼女の手を繋いでいるため、何かにつまずいて転ぶようなことも無いだろう。万が一、そんなことが起こった時にはエルランドが支えてあげればよいのだ。  と、ささやかな期待をしていたエルランドであったが、ファンヌの足取りは意外としっかりとしたものだった。
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