第三章

23/24
前へ
/311ページ
次へ
「ええと。先生の先生ですから。大先生とお呼びしてもいいですか?」  ファンヌの言葉を耳にしたオスモが、視線をエルランドに向けた。まるで可哀そうな生き物をみるかのような視線だ。エルランドはオスモから視線を逸らした。  オスモは再びファンヌに視線を戻す。  ファンヌは正面からオスモを見て、どこか懐かしい感じが込み上げてきた。 「あの、以前。どこかでお会いしたことがありますか?」 「残念ながら、二十年近く私はこのベロテニアから出たことがないからね。世の中には似た人間が三人いると言われているから、きっと私のそっくりさんにでも会ったんじゃないかね。まあ、そう言われると、私もファンヌ嬢に会ったことがあるような気がしてきた」 「ですが、残念ながら、私もベロテニアに来たのは昨日が初めてです。きっと大先生も、私のそっくりさんにお会いになったのでしょうね」 「うん、ファンヌ嬢。この話はもうやめよう」  なぜオスモが無理矢理話を切り上げたのか、ファンヌにはわからなかった。ただ、ファンヌの隣にいるエルランドがむっと唇を歪ませていることだけはわかった。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1584人が本棚に入れています
本棚に追加