第四章

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第四章

 リヴァス王国の製茶の工場は荒れていた。怒号が飛び交い、悲鳴や嗚咽が響く。茶葉が床に散乱していた。  そこから漂う、香ばしいお茶の香り。 「もう、辞めます」  髪を振り乱しながら一人の女性がそう言葉を口にし、黒いエプロンを脱ぎ捨てる。バシっと床にエプロンを叩きつけた。 「俺もこんなところ辞めてやる」  彼女に同調するかのように、白髪の男もエプロンを脱ぎ、丸めてぽいと投げつけた。 「お、お前たち。そんな勝手なことが許されると思っているのか」  男に投げつけられたエプロンを受け止めたのは、王太子のクラウスだ。  ファンヌがいなくなったため、クラウスは製茶の工場の管理者として手の空いている臣下に頼んでいた。その者に工場を取りまとめ、様子を確認するように頼んだだけで、クラウス自身は何もしていない。  だが、彼は父親である国王から工場の様子が荒れているため、「お前がなんとかしろ」と言われてしまった。だから今日、クラウスは初めてここに足を踏み入れたのだ。  つん、と鼻につくお茶の香り。そして耳に飛び込んできた作業員からの不満。 「疲れた」 「休ませろ」 「足が痛い」
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