第四章

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 名前だけの工場責任者が、作業員たちから詰め寄られているところだった。  製茶は立ち仕事であるため、作業者たちの身体にも負担がかかる。ファンヌはそれを知っていて、定期的に休みを取るように指示をしていた。さらに、ファンヌ自身が調茶したお茶を振舞い、作業者たちを労わっていたのだ。  だがクラウスはそんなことは知らないし、ファンヌの代わりにここをまとめていた男も知らない。とにかく「仕事をしろ」の一点張り。だから、次第に作業者の不満と鬱憤(うっぷん)が溜まっていく。  挙句、爆発した。 「ファンヌ様がいらっしゃれば……」  作業者の一人がそう漏らす。元婚約者の名に、クラウスは顔をしかめる。  ファンヌがいなくなっただけで、なぜこの工場はこんなにも荒れてしまったのか。  クラウスは知らない。彼女がどのようにこの工場を管理し、作業者たちを取りまとめていたのかなど。  もちろん、ファンヌの代わりにここにきた臣下も知らない。  だから彼らは作業者を事務的に扱った。 「や、辞めるのを止めろ。そうだ。給料をあげてやる」
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