第一章

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 ファンヌは高等教育学校に入学した途端、調薬を専門とする教授のエルランドの元で、薬草と茶葉を組み合わせるという大胆な発想から『調茶』という技術を生み出した。うまり、ファンヌはこう見えても『調茶』の第一人者なのである。  ファンヌはオグレン侯爵家の第二子として、十八年前に生を受けた。父であるヘンリッキは王宮で働く『国家医療魔術師』であり、母親のヒルマも『国家調薬師』である。さらにファンヌの四つ年上の兄ハンネスも、昨年『国家医療魔術師』の資格を取り、今は父を師に仰ぎながら『王宮医療魔術師見習い』として王宮に仕えている。つまり、オグレン侯爵家とは精鋭揃いの血筋なのである。だが、その裏に彼らの努力もあることを忘れてはならない。  ヘンリッキの執務室の前の扉に立ったファンヌは息を吐く。先ほどから何度ため息をついたことだろう。 (お父様とお母様とお兄様が、この中には揃っているのよね……。ああ、もう。間違いなく()()がお父様たちの手に渡ってしまったということじゃない)  呼吸を整え、手櫛で髪を整えてから、扉を叩く。 「ファンヌです」 「入りなさい」
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