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クラウスにはわからない。金を求めて仕事をしているこの者たちが、なぜ辞めてしまうのか。給料も倍にすると、魅力的な金額を提示したにも関わらず。
「はい。ですからオグレン領に向かいます」
「オグレン領、だと?」
クラウスの言葉ににっこりと微笑んだ男は、静かに工場を去った。
いつの間にかその場に残されたのはクラウスと臣下の二人きり。茶葉の香ばしい匂いが立ち込める工場。だが、作業をする者は誰もいない。そのうち、この香ばしい匂いも異臭へと変わっていくのだろう。
◇◆◇◆
ファンヌはオスモから白いエプロンを手渡された。それは受付の女性が付けているものと同じエプロンだった。
エルランドはオスモと同じ白衣姿。エルランドの白衣は、ファンヌも見慣れている。だが、見慣れている白衣姿と違うのは、この白衣が汚れていない真っ白な白衣であるということ。研究室にいたときの彼の白衣は、いつもどこかに染みがあった。あまりにも汚れが酷い時などは、ファンヌが染み抜きをすることもあった。
「ファンヌ嬢は、薬草のことがある程度わかっているということでいいんだよね」
「はい。ある程度は」
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