第四章

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「では、こちらのお茶を準備してお渡ししますね」 「ありがとうございます」  先ほどまで白い顔をしていた女性は、頬を少し赤らめて礼を口にした。血色が良くなってきたようだ。  よく眠れないと口にしていた男性は、お茶を飲んでからしばらくすると転寝を始めた。ファンヌは彼が目を覚ますまで、そっとしておいた。 『調茶』では身体の不調を解決できないと判断した者は、オスモとエルランドに任せることにしてある。先ほど聞き取った帳面をエルランドに手渡す。彼は、少し表情を曇らせていたが、ファンヌがじっと顔を見つめると、それに気づいたのかやっと顔を綻ばせた。 「ファンヌ。助かった。症状を事前に把握できるだけで、必要な薬がある程度絞れるからな」 「では、私はお待ちしている方にお茶を淹れて、できるだけ穏やかな気持ちで待っていただけるように努めますね」 「た……、頼む……」  エルランドが少し言い淀んでいるようにも聞こえたが、ファンヌはお茶を必要としている人たちにお茶を淹れることができる喜びに浸っていた。 「お待たせしていて申し訳ありません」
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