第四章

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 声をかけながら「お茶はいかがですか?」と紙製のコップに淹れた温めのお茶を勧める。  そうやって彼らの話を聞き、お茶を勧めていくと、その場にいる人たちとも打ち解けてくるというもの。  他愛のない話をしながらも、彼らはファンヌの名を聞きたがり、彼女について興味を持ち始める。ファンヌは当たり障りのない言葉を口にしながらも、エルランドとオスモの元に、薬草を基礎としたお茶を学びにきた、とだけ答えた。  だが、彼女が何者であるか、わかる者にはわかるらしい。  顔に大きな傷をつけた身体も大きな男が、 「もしかして、エル(ぼん)の番じゃないのか?」  とぼそっと口にすれば、そこにいる誰もが納得し始める。  かっとファンヌが顔を赤らめると、 「ああ、悪い、悪い。気を悪くしたなら、謝るよ」  傷の男はあっけらかんと答えていた。どこからどう見ても謝るような態度でもないのだが。 「ま。エル坊が、そういった相手を連れてきてくれたことは、俺たちにとっても喜ばしいことなんだよ」  エルランドのことを「エル坊」と呼べるようなこの男が、ファンヌは気になって仕方なかった。先ほど、話を聞いたときに彼の名も聞いた。
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