第四章

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 名は確か、リクハルドなんとか。今日、この『調薬室』を訪れているのは、古傷が痛むから痛み止めが欲しいとのこと。顔には大きな傷跡もある。彼のその服装から、騎士であることは容易に推測できた。 「ファンヌ嬢。そんな驚いた顔をしなさんな。俺はさっきも名乗ったが、リクハルド・キウル。王国騎士団第一部隊の部隊長で、エル坊はこんくらいの時から知ってるんだよ」  こんくらいのところで、手の平を合わせてちょっと大き目な丸い形を表現しているようだが、それではまだ胎児だろう、とファンヌは思った。赤ん坊を表現するなら、もう少し両手の距離をとって表現した方がしっくりくる。 「ほら。エル坊がオスモに唆されて、十三でリヴァスに留学しただろう? そこからもう、九年、約十年? ちょくちょく戻っては来てたみたいだけど、ちょっとした里帰り程度だし。学校を卒業したなら、さっさと戻ってこいと周りは言ってたにも関わらず、だ。そしたら、なんだか飛び級で卒業して、偉い人になったとか?」
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