第四章

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 ファンヌはにっこりと微笑んで、『調茶』の準備に取り掛かった。定期的に古傷が痛む場合、精神的に緊張している場合もある。特に今回は同じような時期に痛むという話もあり、ファンヌは精神面を疑った。 「念のため、オスモ先生にも診てもらってくださいね。必要でしたら、お茶の方は準備しておきますので」 「あれだな。ファンヌ嬢の入れたお茶を飲むと、心が落ち着く感じがするな」  リクハルドは目尻を下げて笑っていた。その様子を見ていた他の者たちも、おずおずとファンヌに声をかけてくる。  ファンヌは彼らの話を聞くと、お茶を振舞った。 「いやぁ、ファンヌ嬢のおかげで今日は早く終わった。いつもであれば、もう二人、調薬師がいるのだが。今日にかぎって二人とも休みだ」  オスモはがははと笑った後、チャリンと機嫌よくファンヌの手の平の上に金貨を置いた。 「今日の駄賃」  まるでお小遣いをもらった子供のような気分なのだが。 「大先生、これでは貰い過ぎです」  まだお昼前。ファンヌがお手伝いしたのはたったの二時間半。それでも手の平の上には金貨が三枚。平均的な一日分の労働よりも多い報酬だ。
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