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莉咲は彰人と出会ったとき、一目で“ときめき”を感じた。胸のドキドキがおさまらず、興奮気味に声をかけたことを思い出した。
「あきちゃんに出会ったとき、この人! って思ったもんね。さっきのアプリの男性には誰一人思わなかったもん。あぁ、先が思いやられる……!」
莉咲はソファにうずくまり、これから茨の道を行くであろう己を嘆いた。
異性の好みにうるさいことは、自分が一番よくわかっていた。
「りいちゃん……」
心配そうに、彰人が莉咲の肩をたたく。
「婚活パーティーとかはどう? パーティーなら一回で複数の人と出会えるし」
「なるほど!」
莉咲は顔を上げ、ネットで婚活パーティーを検索し、早速最寄りの会場に申し込む。
参加費は2000円で、エントリーシートを記入し送信する。
「とりあえず週末行ってみるね」
「う、うん……」
彰人は莉咲の行動力の速さに驚いているのか、それとも何か思うことがあるのか、少し考えたあと、
「この生活は、どうするの……?」
と遠慮がちに訊いた。
「あ……」
莉咲もやっとそこで現実になる。
婚活するということはイコール彰人と別れて新しい相手をみつける、ということなのだ。
このマンションの家賃は彰人が支払っていて、光熱費と食費は折半している。関係を解消するなら、莉咲は出て行かなければならない。
(今すぐ引っ越し……は、ちょっときついかも……)
引っ越しとなると、家具や家電をすべて新しく買い揃えなければいけないので、金銭的にかなり厳しい。貯金がないわけではないけれど、貯金は結婚後に役立てたい。
莉咲が頭を抱えていると、
「りいちゃんさえ良ければ、結婚が決まるまでここに居てもらっていいんだけど……」
「いいの!?」
予想外の提案に、莉咲は驚いて声を上げる。
「うん。僕は構わないよ。だって、引っ越しとか、色々大変でしょ……」
「大変大変! もう、どうしようかと思ってたよ……!」
「なら、ここに居なよ」
莉咲はこのままの生活を続けながら婚活ができると、甘く考えていたのだった。
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