01 婚活始めます

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 莉咲は彰人と出会ったとき、一目で“ときめき”を感じた。胸のドキドキがおさまらず、興奮気味に声をかけたことを思い出した。 「あきちゃんに出会ったとき、この人! って思ったもんね。さっきのアプリの男性には誰一人思わなかったもん。あぁ、先が思いやられる……!」  莉咲はソファにうずくまり、これから(いばら)の道を行くであろう(おのれ)を嘆いた。  異性の好みにうるさいことは、自分が一番よくわかっていた。 「りいちゃん……」  心配そうに、彰人が莉咲の肩をたたく。 「婚活パーティーとかはどう? パーティーなら一回で複数の人と出会えるし」 「なるほど!」  莉咲は顔を上げ、ネットで婚活パーティーを検索し、早速最寄りの会場に申し込む。  参加費は2000円で、エントリーシートを記入し送信する。 「とりあえず週末行ってみるね」 「う、うん……」  彰人は莉咲の行動力の速さに驚いているのか、それとも何か思うことがあるのか、少し考えたあと、 「この生活は、どうするの……?」  と遠慮がちに訊いた。 「あ……」  莉咲もやっとそこで現実になる。  婚活するということはイコール彰人と別れて新しい相手をみつける、ということなのだ。  このマンションの家賃は彰人が支払っていて、光熱費と食費は折半している。関係を解消するなら、莉咲は出て行かなければならない。 (今すぐ引っ越し……は、ちょっときついかも……)  引っ越しとなると、家具や家電をすべて新しく買い揃えなければいけないので、金銭的にかなり厳しい。貯金がないわけではないけれど、貯金は結婚後に役立てたい。  莉咲が頭を抱えていると、 「りいちゃんさえ良ければ、結婚が決まるまでここに居てもらっていいんだけど……」 「いいの!?」  予想外の提案に、莉咲は驚いて声を上げる。 「うん。僕は構わないよ。だって、引っ越しとか、色々大変でしょ……」 「大変大変! もう、どうしようかと思ってたよ……!」 「なら、ここに居なよ」  莉咲はこのままの生活を続けながら婚活ができると、甘く考えていたのだった。
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