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彰人の顔に惚れた莉咲だったが、付き合っていくうちに彼の内面を知り、さらに好きになった。
彰人はイケメンで、男性アイドルのような可愛らしい顔をしていた。彼はきっと学生時代からモテてきたに違いない。それなのに自分の外見には無頓着で自然体。決して上から物を言うことなく、誰にでもいつでも優しい。
積極的ではないものの、穏やかで、彼が怒ったところを一度も見たことがない。懐が深く、莉咲はありのままの自分を受け入れてくれるのは彼しかいないとまで思っている。
(アキちゃんと、ずっと一緒にいたい)
莉咲は心の中で本音をつぶやき、ながら見をしていたテレビを消した。
食後、莉咲はソファに座ってテレビの音声を聞きながらスマホを見ていたのだ。
(よし、言おう……!)
莉咲が立ち上がろうと腰を浮かしたとき、
「りいちゃん、お風呂沸いてるから、先どうぞ」
と彰人がいつものように声をかけてくれる。
まさに至れり尽くせりで、ご飯の準備もお風呂の準備も彰人がしてくれているのだった。
「ありがとう、アキちゃん。お先にいただきます」
彰人にお礼を言い、莉咲は部屋から着替えを持って脱衣所へ向かった。
(よし、お風呂から上がったら言おう……!)
莉咲はまた先延ばしにするのだった。
お風呂から上がり、リビングへ戻ったあとも莉咲は結婚の話をすることなく過ごしていた。そろそろ寝ようかと時計を確認したとき、思い出すのだった。
(ま、また明日になるところだった……!)
彰人の様子を確認すると、彼はパソコンに向かっている。
リビングに彼の仕事用のデスクがあるのだ。
「アキちゃん、仕事中……?」
遠慮がちに声をかけると、彰人は振り向いた。
「メール確認だけ。どうしたの? もう寝る?」
「ううん。ちょっと話したいことがあって……」
そう言うと、彰人は立ち上がり、莉咲の隣に座った。
「話って?」
彰人は優しい眼差しで莉咲と向き合った。話を聞くとき、彼はいつも向き合ってくれる。愚痴ですら、嫌な顔ひとつせず聞いてくれる人なのだ。
「私たち、そろそろ……結婚とか、しない?」
言ってる途中で、莉咲は思わず彰人から顔を逸らす。彼を見ているのが怖くなったのと同時に、もうちょっとマシな言い方はできなかったのかという恥ずかしさからだった。
「りいちゃん、その話だけど……」
(待って! その返し! やっぱり聞きたくない!!)
莉咲は嫌な予感がして、心の中で叫んだが遅かった。
「結婚は、できない。付き合うときも言ったけど、僕は誰とも結婚する気はないんだ。ごめんね……」
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