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部屋の中
「はぁ…疲れた。」
「お疲れ様でした。お召し物を脱ぎましょう。お手伝いいたします。」
乱れた着物を早く脱ぎたい。
初めての相手は、思い出したくもない。
ズキズキするほどの痛みが下半身に走る。
「白鈴(パイリン)様、大丈夫ですか?」
蓮(リエン)が心配そうな顔をして私を見つめてきた。
「もう無理、あんな男もう相手にしたくない。」
「白鈴様、いえ、小狼(シャオラン)兄さ、(※女性が読まれる場合は小猫(シャンマオ)姉さ、でお願いします)。」
「こら。その名前で呼んじゃダメでしょ。婆に見つかったら怒られるよ。いいの?」
「でも、(兄さんor姉さん)が僕は心配なの。」
「はぁ…わかったよ。ほかの雛はいないから特別に呼んでもいいよ。でも、他の雛が来たら白鈴と呼んでね。わかった?」
「うん、わかった。」
蓮は私の幼馴染。私が齢十三の頃この花街に売られた。その後に売られてきたのが蓮だった。
蓮はここでの名前で、本当の名前は劉(ラウ)or桜蘭(ロウラン)。
「劉or桜蘭、お前は早くここから出な。妓楼に来るのはろくな男が居ない。だから逃げな。」
「やだよ。」
「なんで?」
「だって、(兄さんor姉さん)のそばに僕は居たいもん。だめかな?」
「ダメってわけじゃないけど、でも、こんな辛い思い、劉or桜蘭にはさせたくない。」
「ねぇ、(小狼兄さんor小猫姉さん)、僕はさ、(兄さんor姉さん)のことが、」
「しっ!誰か来る。」
ドタドタと誰かが走る足音がした。
それも私達がいる部屋に来る音が。
しばらく経つと、目の前を通っただけの足音だったと気づいた。
「で、なんて?」
「ううん、なんでもない。」
手を後ろにして、モジモジしていた。
「そう、ならいいけど。」
「ねね、どんな男の人なの?今日の相手は。」
「そうだね、腹を肥やしたおっさんだったね。いきなり襲われて痛かったよ。」
「そっか、お疲れ様。(兄さんor姉さん)、僕が着いてるよ。だから僕が沢山話を聞くから、そんな悲しい顔をしないで。」
劉or桜蘭はそう言った。
「そんな顔してる?僕。」
「うん、してる。すごく悲しそうな顔をしてる。そんな悲しそうな顔、僕は見たくないよ。」
「そっか、」
「ねえ。」
「ん?」
「僕がもしここを出て、外の世界に戻れたら、必ず迎えに来るからね。」
そんなことを言われ私はキョトンとしてしまった。
「…」
「まぁ、お前が大人になる頃には私はもう年代物になってるだろうよ。」
「そんなことないよ!(兄さんor姉さん)はずっと綺麗だよ!」
「そうか、ありがとう。そう言われて私は嬉しいよ。」
「ふふっ。」
「ん?どうした?」
「ううん、なんでもない。」
「そっか、」
そんなやり取りをしていると、襖の外から婆が、急いで支度するように声をかけてきた。
「分かりました。」
「蓮、急いで準備できるかい?」
「かしこまりました。急いでお召し物の準備をいたします。」
今までのやり取りをかき消すように雛と蝶のやり取りをした。
「別の男か、、、」
「暗い顔をしないでください。しばしの辛抱です。そんな泣きそうな顔をしないで。」
「あぁ、ありがとう。」
雛はいそいそとほかの雛を呼びに行き、もう一度身支度をした。
今度は紫色の着物に銀の帯、先が紫の色をした黒い房の着いた簪、蝶の痣を赤く染め、紅を引き、髪を結い、身支度が完成した。
「雛達、行ってくるよ。」
そう言って私は部屋を後にした。
「(小狼or小猫)、大好きだよ。」
小さな声で劉or桜蘭は蝶に言った。
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