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 真っ黒なスクリーンに、白地の文字が順番に浮かび上がる。 『Justice(ジャスティス)』 『それは"何"を基準にするかで、道がわかれるもの』  場面が変わって、夜空の満月から遠く、海の向こうの夜景が映る。  上から俯瞰(ふかん)する視点に変わり、ビルの上に立つ人影が映る。ライフルを持った俺だ。歩く速度に合わせてズームアップになっていく。  視点が切り替わり、斜め下からアップで俺の顔が映った。ビルの上の強風で、髪が巻き上げられている。  衝撃音のBGMが入って、画面が切り替わった。  空からの俯瞰視点で、夜の海の上に架かる赤い橋が映る。爆発した跡なのか、黒煙が上がり、横転した車が複数あり、道のあちこちで何かが燃えている中、一人の男の姿が映った。衝撃音のBGMと共に、だんだん顔がアップになっていく。  周囲を睨み付ける琴森の声が入った。 『これはあいつの仕業だ。俺には分かる』  またカメラが切り替わった。  ビルの屋上に立つ俺が、眼下の夜景を見下ろしながら口を開く。 『あいつに俺の邪魔はさせない』  再び赤い橋の上に視点が変わる。  遠くを見つめるように、睨み付けるように、琴森が顔を上げていく。 『いつか、俺の手で、あいつの凶行を止めてみせる……!』  夜空の満月が、また一瞬だけ映った。  スクリーンの背景が真っ黒になる。白地の文字が表れた。 『まだ、二人が新兵だった頃』 『道が別れる未来など、考えてもいなかった』  場面が切り替わり、山の中の獣道が映った。  時間帯は昼。緑溢れる景色の中、ガサガサと武骨な音が入る。ヘルメットを被り、迷彩服を着た琴森と俺が、上に向かって登っていた。  カットシーンを繋ぎ合わせるように、岩場を登るシーン、崖を滑り落ちるシーン、銃器を両手で持ち上げて川を渡るシーンが、次々と映る。  山間の木陰で俺と琴森が並んで腰を下ろしているシーンでは、水筒を回し飲みして、拳と拳をゴツンと合わせていた。  説明も台詞もないけど、同期の新兵っぽい雰囲気がある。晴れた山間部では雲の流れが速かった。  次、場面展開。  マイケル先生が礼服の軍服を着て、後ろで手を組んで直立不動で立っている。訓示を口にする英語の音声が遠くに入っていた。  カメラがグッと後方に引き下がると、軍服を着た新兵の団体がザッと映った。俺と琴森の後ろ姿を、画像処理でコピーして人数を増やしたようだ。軍帽を被っているから、一見すると同一人物だと分かりにくい。体型はちょっとずつ手が加えてあるみたいで、少しだけ痩せ型、太め型が混ざっていた。  団体がザッと一斉に敬礼する。同じ動作を六回分撮影したおかげで、タイミングが同じなのに腕の角度が少しずつずれていて、ちゃんと複数人数の仕上がりになっていた。  場面が変わり、どこかの建物内の廊下が映った。スーツ姿の琴森の背中が映る。  前方からスーツ姿の俺が歩いてきて、片手を挙げて琴森に話しかけてきた。 『異動、おめでとう。向こうに行っても元気で』  視点が変わって、窓の外の上空から建物内の廊下を映す画面に変わった。俺と琴森が握手している。 『お前も』  カメラの視点が『俺』視点に変わる。目前の琴森が仄かに微笑んでいて、何かを言おうとして口元を閉じた様子がアップで映った。  また、カメラの視点が窓の外の上空から建物内の廊下を映す視点に変わった。二人が別れて、それぞれ廊下を歩いていく姿が映る。  歩きながら、琴森の顔のアップが映った。少し憂いを帯びた表情。栄転を素直に喜んでいる様子には見えない。  こいつ、こんな表情してたの?  また、スクリーンの背景が単一カラーになった。さっきと違って、落ち着いた青い背景に、白地の文字が浮かび上がる。 『そして始まる』 『それぞれの日々』
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