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髪を切ってからは初めて話をするだけに、いつも以上に緊張する。今までの落ち着いた空気感から一転、キラキラオーラを纏った柴崎先生は私なんかが気軽に話のできる人じゃないみたいで、気後れ感がすごい。
「昼までの時間空いてるかな。ちょっとだけ作業手伝ってほしいんだ。それとちょっと話したいこともあって……」
まさかのお誘いに心が喜びで高鳴っているときだった。後ろから別の声が私の耳に届いた。
「早見、悪いけど今少しいいか」
声のした方を振り返ると谷岡先生が立っていた。
「この間のレポートのことでちょっと。柴崎、俺の生徒に何か用か?」
谷岡先生の問いかけに柴崎先生は笑顔で頷いた。
「ああ、大したことじゃないから大丈夫だよ。早見さん、今の話は気にしないで。またね」
そう言って歩いていってしまった。こんな時に谷岡先生につかまるなんてついてない。私は黙って谷岡先生の後をついて行った。
「この間出してもらったレポートだけど、実験内容はいいのにまとめ方が雑じゃないか? 早見らしくないなと思って。実験内容は細かくてすごく良かったんだから、結果ももっと分かりやすく書かないと勿体ないぞ」
谷岡先生の部屋に入るなり、提出したレポートを渡された。言われていることはもっともで、このレポートは先週水曜中に提出だったんだけど、午後は柴崎先生のために空けておきたくて無理やり早く終わらせたものだった。質が悪いと言われても仕方がなかった。
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