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講義をしている声、ホワイトボードに文字を書く腕、手。そしてもっと仲良くなりたいと言ってくれたときの表情と……キスしてくれた時の顔。どれもこれも素敵すぎる、一瞬でも手が届くなんて希望を持った私が馬鹿だったんだ。
意味もなく講義に出てしまった自分の行動がたまらなく虚しくなってしまい、今日とったノートを近くのゴミ箱に捨てた。
なんだか疲れてしまい、そのまま家に帰ろうとするとスマートフォンの通知ランプがチカチカと光っていた。ロックを開いて見るとお兄ちゃんからのメッセージが来ていた。
“今日鍋食べに行きたいんだ。水曜だけど来れないかな”
はいはい。いつものお誘いね。私は“了解”とだけ打ってさっさと送信した。
どんなお誘いでも今日は1人でいるより誰かと過ごしたほうが気が紛れるからちょうど良かったかもしれない。あとで時間と場所が送られてくるだろうから、それまでは図書館で課題を進めていた。
そろそろお兄ちゃんの指定した場所に向かおうかな……そう思って学校を出ようとしたときだった。目の前を1台の車が通り過ぎていった。徐行していたせいか運転席も助手席もしっかりと見えた。
――柴崎先生と鈴谷さんが並んで楽しそうに話をしている。
鈴谷さんはモデルもやってるしきれいな人。これから2人でご飯にでも行くのかな。そりゃあ私との約束なんか忘れちゃうよね。
でも、ずっと授業サボってた人だよ。眼鏡と髪型変えただけで態度変えるような、そんな人にも勝てない自分が悲しくなってくる。
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