01. 憧れからの恋心

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 その友達というのが、高校からの同級生で同じ大学に通っている湯川(ゆかわ)佳奈絵(かなえ)、今の私にとって一番気楽に接することのできる存在だ。その理由がお兄ちゃんにある。  というのも、私は大学ではお兄ちゃんがアイドルのハルトだということを誰にも話していない。そのことを知っているのは佳奈絵だけなのだ。  高校の頃は人の少ない田舎育ちということもあり、アイドルになる前のお兄ちゃんを知っている人は私の周りにもそれなりにいた。  よって私がアイドルであるハルトの妹だということは学内中に知られていた。それ故私の周りのハルトファンは、ハルト目当てで私を利用しようと近づく人とそういう悪意から守ってくれる人に二分しており、いい思いも嫌な思いもそれなりにしてきた。  お兄ちゃんの名前で無駄に目立つのはもう嫌だったから、大学に入学したタイミングで一切周りには話をしないことにした。  なので大学でお兄ちゃんの事を知っているのは同じ高校だった佳奈絵だけ。佳奈絵にも一切口外しないようお願いしていた。  佳奈絵は高校の頃から読者モデルをやっていて高校卒業と同時に大手の事務所に所属している。今は大学に通いながら雑誌のモデルをやっている事もあり、芸能界という特殊な環境に身を置く家族を持つ私の事情を理解してくれるのも早かった。  だから私は大学でも佳奈絵と過ごすことが多い。気を使わずに何でも話すことができるからだ。同じクラスにも友達はいるし仲良くやってもいるけど、秘密を抱えている分どこか距離を作ってしまっていた。
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