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00. 序章
昔から誰かにとっての1番になりたい、そう思っているのに、私早見日咲は2番目にもなれない女なのだ。そんな劣等感から抜け出せずにいる。
幼稚園の頃、同じクラスに好きな男の子がいた。智くんというその子と仲良くなりたくて、お母さんにお願いして智くんの好きなおかずをお弁当に詰めてもらっては、お昼ご飯の時にさり気なく見せていた。
「あ、ミートボールだ。僕それ好きなんだよね」
「たくさんあるからひとつあげるよ」
私はミートボールなんて好きじゃなかった。むしろ智くんに食べてほしくてしょっちゅうお弁当に入れてもらったものだから、早々に食べ飽きてしまった。それでも智くんを喜ばせたくて、お母さんに毎日のようにおねだりしていた。
だから智くんに「僕はひなたちゃんのことが一番好き」なんて言われた時は天にも昇る気持ちだった。だけどそんな幸せも長くは続かない。
ある日突然入園してきた女の子に智くんの心は奪われたのだ。親の都合で引っ越していった子に代わって新たに入ってきたらしいのだけれど、私なんかよりずっとずっと可愛くて、彼女はなんの苦労もなく智くんの隣を手に入れた。
それ以降、もうお弁当にミートボールを入れたところで何の意味もなくなってしまった。なぜなら私は智くんの近くでお弁当を食べることすらできなくなったから。
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