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プロローグ
本音を言えば、性的な意味で食べられたいと思ったのは認める。
顔は好みだし、ジムに通ってるだけあって体は引き締まってるし、一回りほど歳も離れてるはずの彼には、同年代とは違う色気もある。
「なに? どうかしたの、そんなに見つめて」
「いや、私ごときで相手が務まるのかなと」
「ここまで来て? 本当に面白い子だな」
「あっ、の……あぁん」
硬くなり始めた乳首を甘噛みされて嬌声が漏れた。
私を見下ろすくっきりした二重の大きな目は、柔らかく笑えば笑うほど垂れ目が強調されて、目尻に刻まれた皺が異様に艶っぽい。
別に自暴自棄になってるワケでもないし、一晩限りの関係に慣れてるワケでもない。
だけどこんな素敵な人が私なんかに本気になるワケがないことは分かってるし、それくらいの分別はあるつもりだ。
「考えごとする余裕があるなんて、妬けるな」
「いえ、そういうワケじゃ」
「何も考えられなくなろうよ、二人でさ」
誰に言った言葉の使い回しなのか、胸の奥はチリッと痛んだけど、今は快楽に溺れるのが正解だろう。
キスが深くなる度に、いつもなら絶対にしないほど積極的に舌を搦めて、ぐちゅくちゅと唾液を掻き混ぜるみたいに彼を求める。
一晩。そう、この一晩限りの関係なのだから。
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