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第3話 燃える女の「せいやーっ!」
師走の中山は特別な空気だと聞いたが、その通りだ。1年の締めくくり、有馬記念。今年はクリスマスイブに開催である。数々の伝説が生まれたこの地で、今日もまた新たな伝説が生まれるのだ。
1番人気は、ダービー馬と菊花賞馬の2強だが、オレは3番手の馬に賭けようとしている。馬の名はポインセチア。花の名が付いてる事から分かるように、牝馬である。コイツは幸運の花言葉を持つ花の名に違わず、オレに幸運をくれた。複勝率百%、今年のオークス馬だ。騎手も女性である。パドックも堂々たるものだった。
ファンファーレが響く。馬がスタートする。走る馬達は皆素晴らしい馬体である。最後の直線に差し掛かろうとした所を、私は最前列で観ていた。
「せいやーっ!」
鞍上の女の声が確かに聞こえた。気合いの入った声を張り上げ、数々の男馬を捩じ伏せ、セチアは1着でゴールしやがった。
中山は勿論、馬も騎手も燃えていた。ポインセチアの花言葉は祝福だとか幸運を祈るであるが、もう一つ「私の心は燃えている」もあるらしい。
今日のレースの為に付いたような名前だなと、オレは万馬券を換金しながらほくそ笑む。
たっぷり勝たせてもらったぜ。飲み屋でハシゴができらぁ。
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