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第5話 煙突からの訪問者
亀有の某銭湯は24時までやっている。お陰で私もひと仕事を終えた後にゆっくり浸かる事が出来た。
今日の私はサンタの服装で街を練り歩いた、昔の言葉で言うサンドイッチマンだった。金も無いフリーターにとって、安い銭湯は本当に有難い。足が伸ばせてゆっくり出来る、なんて贅沢な空間か。
どすん
いきなりの物音に、私は身構えた。何か落ちてきた。事故か?
しかし。出てきたのは赤い服を着た白髭姿の大男だった。コイツはサンタクロースか。
「おい、どこから入ったんだ。ちゃんと金払えよ。てか、靴脱げ靴」
サンタは慌てて下足を脱ぎ、受付に向かった。
その後浴場に来たサンタに、私は堪え切れず色々聞いてしまった。なぜ来たのか。何故ここなのか?と言ったものだ。
「煙突があったからじゃ」
「銭湯のじゃん」
「煙突に飢えていたワシには。あの煙突が凄く嬉しかったんじゃ」
そうかよ。結構大変なんだな、本職も。
風呂屋を出ると、もう終電が近い。サンタにどうやって帰るのか聞いたら、空を指差す。何と煙突の天辺に4頭のトナカイが繋がったソリがある。サンタは文字通り飛んでいく。
その後雪になった。湯冷めしそうだ。
来年はもっとマトモなプレゼントをねだらなきゃな。
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