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「勝機が見えているのか、杉山はうんうんと頷いているように見えます。  兼田さん、このお題はどうなんでしょう。選手からするとやりやすいんでしょうか?」 「やりやすい方だと思いますね。ただし、同じ相手に自然に使用できるのは二回くらいで、それ以降は不自然になりやすい言葉なので注意が必要です」 「なるほど。さあ、制限時間の1分間でどのような『久しぶり』を見せてくれるのか、杉山広務!」  開始のブザーが鳴り響くと、杉山がふうっと大きく息を吐いてから歩き出した。 「杉山広務、今スタートしました!!まずは商店街入ってすぐのお惣菜屋に向かいました」  杉山は惣菜屋の前で立ち止まり、カウンターにいる店主に声をかけた。 −久しぶり。大将元気そうで。今日は俺忙しいからまた来るよ−  そう言って杉山は惣菜屋を後にした。 「ここは買い物はしないですぐに切り上げました杉山。兼田さん、杉山のこの滑り出しはいかがでしょうか」 「いいと思いますよ。会話を引っ張ってポイントをかせぐ作戦もありますけど、先ほど言ったように『久しぶり』は連発して不自然減点になってしまうリスクが高そうですからね」 「はい。自分から声をかけておきながら淡泊に去っていった所は不自然減点になりそうですけど、1分という制限時間の中で買い物に時間を取られるのは得策でないと判断したんだと思います」 「なるほど。お惣菜屋で無理に会話を続けて不自然な『久しぶり』を出してしまうより次々と店を変えて堅実に『久しぶり』をかせごうと」 「そういう作戦を選択したと考えられますね」  杉山は惣菜屋の隣のたいやき屋の前で足を止めた。
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