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納得いかないものはいくつかはあるが、そろそろユーラント
大陸にある集落へ帰らなければならないかとそんな風に思って
いた。自分達が留守の間人手は足りているのか気には
なっていた。定住する覚悟を決めた地だ。いつまでものんびり
旅は続けてはいられない。
「エイジャン大陸・・・か。」
空を見上げたユーリウスの頭の中に、この地での出来事が
浮かび上がってくる。
「色んなコト、あったよな。大陸神エイジャンが言うには
平和っていうのはまだまだ時間がかかるみたいなコト
言ってたけど・・・。」
「おーい!!。」
フンヴォンが走って来る。
「あ、あのさ・・・。お、俺。」
「何だよ?。」
「王と両親に許可をもらってきた。俺、ロナウハイドと
もう少し世界を回りたいって。ダメか?。」
「ダメなわけないじゃん。たださ、俺達一度ユーラントに
帰るから付き合ってくれ。」
「分かった!!。」
ユーリウスとフンヴォンは握りこぶしを合わせた。
ユーリウスの服が乾く頃、ジルカメスとイシュナルに
話をし、自分達がもうそろそろ出掛ける事を告げた。
「俺も行こうかな・・・。」
ジルカメスが呟いた。
「大陸神エイジャンの使途が、エイジャンを出ていいのか?。」
「いや、エイジャンは寧ろ世界を見て来いと言っている。
どうせならロナウハイド達と一緒に行ければと思っている。
あと、イシュナルが行くって言ってくれれば・・・。」
「イシュナルは、『行かない』なんて言わないさ。たぶん
世界の果てまでも着いて行くと思うよ。」
「はい。ジルカメス様がいいと仰るなら。」
イシュナルは笑顔で答えた。ジルカメスが顔を耳まで赤く
したのは言うまでもなかった。
フンヴォンの両親に挨拶をし、大陸神エイジャンに連絡
しようとしたジルカメス。
「ユーラントに行く前に、ちょっと寄りたい所があるんだ
けど。」
「寄りたい所・・・?。」
「嘗てハビロの塔があった場所。ティグル王国の中心地だった
場所だ。」
ジルカメスの故郷という事か。何か思う事があるのだなと
ユーリウスは思った。
「よしっ、じゃあ出発だ。」
フンダイ王宮の敷地を出ようとした時、目の前に守護神
クメールが降りて来た。
「大変な事が起こっています。ヒルタイトの守護神
ハットゥシャとランムラビの守護神シュメールの間で争いが
勃発し、国同士さえも一触即発の状態です。お母様と、
両国の和平交渉の立役者だったブラウマン王国国王
ヴィンドゥーが必至で仲裁に入ろうとして
いますが、両国とも一歩も引かない状態です。」
「なんだって・・・?。」
「どこまでお馬鹿さんなんだか・・・。」
ユーリウスとジルカメスは頭を抱えた。
「まいったな、エイジャンの揉め事に頭突っ込みたくは
ないけど、大陸神エイジャンがそっちに力を割いている為に
俺達が帰れないんじゃ話になんねえし。」
「どうする・・・?。」
「選択肢はないだろう。しゃあねえな。」
ユーリウスは今度は守護神クメールに話し掛けた。
「で、奴等どこで争っているんだ?。」
「ランムラビの・・・『ハビロの塔』の跡地です。」
「なぁにっ!!。」
「なんでよりによって・・・。」
「クメール!!。俺達をそこへ転送・・・いや、国境を
越えるから無理か。」
「確かに、転送魔法はできませんが、これをお使い
ください。」
クメールは一本の羽を差し出した。
「マヤウの羽か。そうか、分かった。急ぐぞ!!。」
ペガソーサはいきなり現れ、マヤウの羽を受け取った。
「さあ、行くぞ!!。」
ペガソーサは皆を乗せると高く舞い上がり、ハビロの塔の
跡地を目指した。
ランムラビに近づくにつれ、集落や街が崩壊している
場面が目に付く。
「国を守るはずの守護神が、一般市民を巻き込んで
いいのかよ。」
ユーリウスは怒りを隠せない。
「いい訳ねえさ。あったりめえだ!!。」
ジルカメスも叫ぶ。
「で、乗り込んできたはいいが・・・どうやって両国を
止めるか、だ。」
「あ・・・全然考えてない。」
「えーっ・・・名案でもあるんじゃなかったのか?。」
「無いけど・・・。何か勢いで来ちゃった。っつうか、
止めても無駄っぽい気がするんだよね。」
「そうだけど・・・そこをなんとか・・・。」
「それでなんだが、守護神ハットゥシャと守護神
シュメールは同じ大陸神エイジャンから誕生した守護神
なんだよな。」
「そうだけど・・・。」
「この二体は兄弟って事だよな。」「まあ、そうだ。」
「俺さあ、一人っ子だったから兄弟ってのに憧れててさ、
兄弟喧嘩できるヤツってすんごく羨ましくてさあ・・・。」
「あーっ、俺も・・・。」
「っつう訳で、守護神同士の大陸最大の兄弟喧嘩を
見物するとしますか。」「だな。」
ユーリウスは、二体の神の戦いを食い止めようとして
いるブラウマン王国国王ヴィンドゥーの姿を見つけた。
「あそこへ降りるぞ。」「分かった。」
「おお、勇者ロナウハイド殿!!。実は大変な・・・。」
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