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お洒落の欠片もない居酒屋に入る。常連だったら、関係に突っ込まれているところだろう。
「山本くん、お酒はよく飲むの?」
「いや、週末だけだよ。ストレス発散に飲むんだ」
手始めに注文したビールと、砂肝串がテーブルに並ぶ。森川さんはレモンチューハイを頼んでいた。
ぽってりと艶めく唇が、ジョッキを挟む仕草は本能を疼かせる。伏せた目から、伸びる睫毛にも吸いこまれた。時間をかけて眺めてみても、彼女は変わらず魅力的だ。
「そうなんだ。何かあるなら話聞くよ」
森川さんの態度から、それなりの仲だったのではと推測する。
実際、小学生の時には友人も多くいて、やんちゃしたり、未熟な恋をしたり、幼い自由を謳歌していたものだ。あまりにイベントが多くて、逆にほとんど忘れたけど。
「いいの? 森川さんに聞いて貰えるなら気分最高になって帰れそう!」
冗談半分に笑い、ジョッキをあげる。ぶつかり合うグラスが、小気味いい音を鳴らした。
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