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side桜餅 俺が選べば……
蔵前は、俺にスマホを渡してくる。
その画面に映る写真を見て、俺は戸惑っていた。
遠くから撮られた写真だからわからない。
でも、これがもし凛々子さをだったら俺は絶対に後悔する。
「本当に、俺が選んだ人には、手を出さないんだよな?」
「ああ。桜木だけじゃないよ。次に利用してもらったり、誰かを紹介してもらう為にも初めての客が選んだパートナーには手を出さない主義なんだよ。俺は……」
「それは、高く売れるかも知れない人でもか?」
「金額は関係ねーーよ。俺のポリシーだからな。あっ、それに、桜木は俺を嫌ってるかも知れないけど、俺は桜木の事大切な友達だって思ってるよ。だから、桜木が選んだ相手は絶対に手をださない」
俺が選べば、手を出されない。
俺が選べば、売られない。
俺は、もう一度、その写真の人物を見る。
「あっ、待って。もう一枚写真きてたわ。それで、いいなと思ったんだった」
蔵前は、俺にスマホをくれと手を差し出してきた。
蔵前にスマホを渡す。
「あーー、あった。これこれ。桜木の、タイプじゃないかもだけどな!奥さんと違うだろ?タイプ的に。ほら」
「ああ」
蔵前に渡されたスマホを受け取る。
さっきとは、違う。
二人で写真に映ってる。
「画面左の赤茶色でパーマのかかった髪をしてるのが、俺の大事な彼女の美奈子。それで、こっちの肩ぐらいの黒髪の女が……」
名前を言われなくてもわかってる。
俺は、彼女の顔を忘れる事はない。
「名前なんかいいか。桜木、参加するか?」
「する」
凛々子さんを傷つけられたくない。
ましてや、蔵前に抱かれるなんて!
想像したら、吐き気がする。
「そっか……。じゃあ、参加費10万」
「10万!!高いな」
「当たり前だろ?出会いの場は安くないんだよ」
「後で、おろしてくる」
「いいよ、いいよ。今日中なら」
「それで、セカンドパートナーの集まりっていつなんだ?」
「明日だよ、明日」
明日……。
明日なんて、すぐじゃないかよ。
昨日、振られた俺が明日セカンドパートナーの集まりに行くなんてどう考えても頭おかしいと思われる。
「予定があるなら、三ヶ月後にするか?」
「いや、大丈夫だ。明日でいい」
「そうか。じゃあ、ここにサインしてくれ」
俺は、差し出された紙を隅々読んでからサインをする。
小さい文字で書かれていて見落とせば最悪な事態になるからだ。
別にたいした事は書かれてなかった。
虚偽の名前や住所は不可とか参加費は相手が見つからなくても返金出来ないとかそんな感じだった。
「簡単に説明するから、ちょっと待ってくれ」
「ああ。わかった」
蔵前は、店をcloseにして鍵を閉める。
カーテンをシャッと引くと俺を店の裏側に連れて行く。
「桜木にだけBlu-ray見せてやるよ」
「Blu-ray?」
「ああ。どんな感じで集まりが始まって、どんな感じで売られて行くかだよ」
蔵前は、嬉しそうに笑いながらポケットからじゃらじゃらと鍵を取り出した。
金庫の鍵を開いて開けると中には大量の何かが見える。
蔵前が引き出すとそれが全てケースに入ったBlu-rayだとわかった。
5年分にしては、かなりの量だ。
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