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side桜餅 売られる女達
「あった、あった。これだな。再生するよ」
蔵前は、デッキにBlu-rayを入れて再生ボタンを押す。
よくテレビで流れるような婚活パーティーの映像が流れる。
ただ、そのパーティーを仕切っている蔵前の様子だけが変な事はわかる。
「これこれ。実物を見て、俺がどうだって聞いてるんだよ。そしたら、男達が10万、50万とか言って話してるんだよ」
「ここで、値段の交渉をしてるのか?」
「そうだよ。写真と実物が違う事ってあるだろ?だから、交渉するのはこの場所で。それを知っているのは、俺と美奈子だけ」
「この人達は、自分が買われるのを知ってるのか?」
「まぁまぁ、そんな興奮すんなって桜木。今回の参加者だったら、知ってる奴が半分で知らない奴が半分ってとこかなーー」
蔵前は、顎を擦りながら笑う。
「知ってる人物もいるって事か?」
「ああ。こいつとかこいつとかは知ってるよ。二回目だからね」
「二回目って一回契約したら永遠じゃないのか?」
「なわけないだろ?一回契約するだろ。で、続いてるか続いてないか確認するんだよ!定期的にな」
「定期的って?」
「三ヶ月に一回ぐらいかなーー。俺も飽きるのそれぐらいだし……」
「それで、お前がジャッジするのか?」
「だいたい、見たらわかるだろ?契約したのに嘘ついてるなって……。そしたら、否応なしに参加者になるわけよ」
「それで、二度目は?」
「二度目は、確実にそいつを売るんだよ!!」
蔵前は、指で鉄砲を作って黒いドレスを着た女の人を打つしぐさをする。
「こいつは、大嘘つきだったんだよ。一ヶ月に一回の定期連絡で、契約相手と続いてるって言うからさ。俺も美奈子も信じてたんだよ。そしたら、三ヶ月後に会いに行ったら。その男との距離感が違うんだよね。セカンドパートナーの定義としては、プラトニックな関係ではあるけど。やっぱ、手繋いだり抱き締めたりぐらいはしてるのよ。キスとかもしてる奴はいるよ。そうやって回数を重ねた二人は、見つめ合って笑ったりするんだよ。だけど、こいつは全くなかった。だから、このおっさんに300万で売った」
悪びれもせずに言う蔵前の言葉に背筋が凍りつく。
もし、俺が凛々子さんと契約して嘘をついたら売られるって事か……?
「結果、こいつもお小遣いもらえるしよかったらしいよ。Win-Winってやつだろ?桜木」
「好きじゃないやつに抱かれるって事だろ?」
「そうなるよねーー。でも、金もらえるからいいじゃん。そもそも、嘘ついて契約交わした奴が悪いんだよ。あっ、売られた後……見る?」
「えっ……」
「変態が多いから、わざわざBlu-rayくれるんだよーー。見せてやろうか?下都賀かれん」
蔵前の言葉に目の前が暗くなるのを感じる。
下都賀かれん……。
俺の初恋の人。
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