side桜餅 さようなら恋

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遡る事、二時間前ー 俺と花岡先輩は、駅前の居酒屋【笹の葉】で晩御飯を一緒に食べていた。 先輩の名前は、花岡優太朗(はなおかゆうたろう)。 年齢は、1つ上で……。 野球部をやっていた。 俺は、帰宅部だったけど……。 たまに、玉拾いに先生に頼まれて行っていたから仲良くなったのだ。 先輩は、178センチで外国人のように彫りが深く整った顔立ちをしている。 俺も、同じような濃い目の顔立ちで。 よく同級生からは、兄弟だろ?と言われていた。 昔から、あまり悩みなんかを話したりしない人で……。 俺の恋愛相談や下らない悩みなんかをよく聞いてくれた。 そんな先輩が、俺に相談したい事があるなんて言うもんだから……。 急いで、仕事を終わらせて会いに来たのだ。 先輩が、俺に相談なんて初めてに近かったから……。 居酒屋の個室で、俺達は飲みながら話す。 15分程した時に、先輩が遠い目をしながら話し出した。 その声は、いつもより低く。 消え入りそうな声で呟いた。 「桜餅。俺な!もしかしたら、子供無理かも知れない……。凛々子も、41歳だしな。無理は、させられない。検査とか行ってないからわからないんだけどさ。何となくだけど、原因は俺じゃないかなって思うんだ」 俺は、先輩の言葉に「まだ、大丈夫ですよ」「検査してみたらどうですか?」「治療受けてみたらいいんじゃないですか」何て軽々しい言葉を言えなかった。 だって、俺にもわかるから……。 結婚して、9年。 俺達夫婦も子なしだ。 検査や治療の末、離婚した友人達を知っている俺達は治療に手を出せずにいる。
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