side桜餅 久しぶりの再会

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side桜餅 久しぶりの再会

タクシーに乗って花岡先輩のマンションにやってきた。 ピンポーン……。 ピンポーン……。 インターホンがむなしく響く。 どうやら、凛々子さんは外出しているようだ。 買い物に行ったのか……? 時計を見ると10時半を回っていた。 晩御飯の買い物にスーパーに行くのも有り得ると思った。 近いスーパーを検索すると、徒歩5分程の場所にスーパー【エス】があるのがわかった。 俺は、急いでそこに向かう。 【エス】についたのは、10時45分。 店内を一通り探してみたけど、凛々子さんは見当たらなかった。 店を出ると……。 「陸斗」 俺を呼ぶ声を見つめるとそこには親友がいた。 「あっ君。久しぶり」 「久しぶりだなーー。9年と8か月だっけ?陸斗の結婚式が最後だよな」 「そうだな。でも、あっ君がここにいるの珍しくない?」 あっ君は、盆や正月になってもここに帰って来る事はない。 そんなあっ君がいるのが不思議だった。 「そうだよな。真空の親父さんが倒れたって連絡があったから」 「真優(まゆ)ちゃんから?」 「そう。それで、顔見にきたんだ」 「あっ君は、やっぱり今でも真空ちゃんを愛してるんだね」 「当たり前だ!俺の初恋相手なんだからよ。でも、今の嫁さんもちゃんと愛してる」 「華子(はなこ)さんだよね。可愛らしい人だったな。結婚式でしか会ってないけど」 「そうだよな!あれから、俺と華子はこっちに来ないしな。華子は、真空を忘れられない俺を丸ごと包んでくれたから。大事にしたいんだ」 久しぶりに会うあっ君は、最後に会った時と何も変わってなくて嬉しかった。 「駅前の【モンブラン】で話さないか?飯でも食いながら」 「いいよ。今日は、外回りで直帰だから」 「あっ、でも。さっき、誰か探してたんじゃないのか?」 「えっ。あっ……。もう、大丈夫だから」 「そっか。ならいいんだけど」 「大丈夫だから、行こう」 親友なのに、凛々子さんの事を話せないのは辛い。 藍子と結婚する時、あっ君は凄く喜んでくれたから話せない。 「なぁーー。陸斗」 「何?」 「下都賀って、売春してるの?」 あっ君の言葉にさっきの映像が流れる。 「わからないな……。卒業以来、会ってないし。どうして?」 「いやーー。浦瀬(うらせ)から聞いたんだよ。先週さ、出張で来てたから会ったんだよな。そん時に言ってたから……」 「そうなんだな。下都賀が売春ね」 浦瀬拓篤(うらせたくま)は、俺とあっ君の一つ下の後輩だ。 下都賀とは小さい頃から近所に住んでて、俺の初恋をよく協力してくれていた。 「浦瀬が、陸斗に会いたがってたよ。たまには、あいつの所に行ってやってくれよ。藍子ちゃん連れてさ」 「あ、あぁ……」 「花岡先輩、元気してる?」 「うん、元気。元気」 「相変わらず会ってるんだろ?仲良かったもんな」 「うん。俺は、花岡先輩がここにいるからこの街に残ったからね」 「変わらねーーやつだな。花岡先輩をリスペクトしてたもんな」 あっ君は、ニコニコ笑ってる。 俺、あっ君にも凛々子さんが好きだって言えない。 軽蔑されたくないんだ。 後ろめたいのかも知れない。 「あっ、そうだ。下都賀がAVに出てるらしいから浦瀬が知ったんだってさ。売春」 「えっ、AV……?」 さっき蔵前が見せてくれたBlu-rayが頭に過る。 「嫌がって泣いてる顔がバッチリ映ってるらしい。ただ、駅前の【ロザリオ】にしか置いてなかったらしいよ」 「【ロザリオ】って去年潰れたんじゃなかったかな?」 「潰れた、潰れた。あそこ、素人のヤバいAVが出回ってるって噂だったからな。昔から……覚えてる?」 「確か、中学の頃に崎野(さきの)が借りてきたって兄ちゃんの名前使って」 「そうそう」 蔵前が見せた下都賀の映像と似たようなのを中2の夏にあっ君の家で見た。 って事は、蔵前が引き継いでる商売は昔からあったって事なのか?
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