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sideりりまる 美奈子との再会
あれは、三ヶ月前の出来事だった。
私は、父の三回忌に港町であるこの場所に優ちゃんと帰った。
「遠い所まで、ありがとね」
「そんな事、気にしないで下さい」
「お母さん、膝大丈夫?」
「大丈夫よ。別に折れたりしてないんやから……。あっ、そうそう。昨日、美奈子ちゃんがお父ちゃんにお菓子持ってきてくれたんよ。向こうで、会うなら御礼言っててくれない?」
「わかった」
美奈子とは、結婚してこの街を出るまでは仲が良かった。
だけど、結婚してからは連絡を取り合っていない。
まさか、父の三回忌を知ってわざわざお菓子を持って来てるとは思わなかった。
「美奈子ちゃん。昨日の夜、新幹線で帰るって言ってたからね。よく、一緒にバーベキュー行ったのとか覚えててくれててね。お母さんも久々に嬉しかったんよ」
「そっか……。それは、良かったね。あれ、愛美は?」
「愛美は、昨日から彼氏とデート」
「へぇーー。そうなんだ」
母と一緒に暮らしていたのは、6つ下の妹の愛美。
私は、愛美のお陰で嫌な思い出が多いこの町を出られたのだ。
「凛々子は、泊まっていかんでしょ?もうちょいしたら、水原さん来るからきたら帰りなさい」
「うん、わかった」
水原さんとは、父方の親戚だ。
膝の悪い母を気にして、愛美がいない日は泊まりにくるらしい。
「陽子ちゃん、来たよ」
「あーー。えっちゃん、こっちこっち」
「あれ?珍しく凛々子ちゃん来てたんやね」
「もう、帰ります」
「旦那さんも……」
「お邪魔しています」
「水原さん、母をよろしくお願いいたします」
「はいはい。大丈夫よ!気をつけて帰ってね」
「次は、いつ帰ってくるかわからんのでしょ?」
「うん。ごめんね」
「いいの、いいの。凛々子が優太朗さんと元気やったらそれが一番よ」
私は、母と水原さんに会釈をして家を出る。
優ちゃんがついてきてくれなかったら、この街になんか来れない。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん」
車に乗り込むとすぐに発進する。
水原さんは、小さくなるまで手を振ってくれていた。
「凛々子。しんどくない?大丈夫?」
「大丈夫。少しは、慣れたから」
私は、この街に住んでいた時。
ずっといじめにあっていた……。
高校進学を母方の祖父母がいる今の街に引っ越し。
それからは、ここには帰ってきていなかった。
優ちゃんと出会ったのは、二十歳だった。
何のゆかりもないくせに、私はあの街の成人式に出たのだ。
「今でも思い出すよ。成人式の日、凛々子が野球部の連中に囲まれてて……。「すごく綺麗ですね。どこ中だったんですか?」とか言われててさ」
「それに私は、答えられなかった。だって、この街の人だったから」
「答えられなかったからよかったんだよ。だから、俺は凛々子に出会えた」
「優ちゃん……」
「凛々子がこの街を嫌いなのはわかってる。だけど、時々は帰ってきてあげような。お母さんの為にも……」
「そうね。私もいい歳した大人だからね。アラフォーにもなって嫌だとか言ってられないよね」
流れる景色を見ながら、私は決意していた。
時々は、この街に帰ろうと……。
せめて、母が生きてるうちは……。
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翌日、私は久しぶりに美奈子に連絡をした。
『もしもし。りりちゃん?』
「そう。久しぶりだね」
『本当だね。元気してた?』
「うん、元気だよ。お父さんにお菓子ありがとう。美奈子が持ってきてくれたってお母さんが……」
『全然、全然。そんなの気にしなくていいよ。あっ、あのさ。久々に会わない?』
「えっ……。あっ」
『いいじゃん、いいじゃん。待ち合わせ場所、メッセージするから』
美奈子は、嬉しそうに電話を切る。
美奈子は、いつも強引な所があった。
私は美奈子に嘘をつかれ、何故か嫌われいじめられたりした事もある。
でも、美奈子自身は何も悪いと思ってはいないし……。
自分がしたせいだと気づいていない。
家庭環境が複雑な美奈子を無下に出来なかったのは、他でもなく私だ。
ブブッ……。
美奈子から、メッセージが送られてきた。
「明日の14時って早すぎでしょ?」
私は、笑いながら了解っと送った。
美奈子から、何を話されるんだろうか?
何だか、憂鬱。
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次の日、優ちゃんはとっくに仕事に行っていた。
更年期に差し掛かりつつある、私の体は……。
毎朝起きるのが苦手になってしまった。
優ちゃんは、何も文句を言わない。
悪いと思っているんだけどね。
シンクに置かれたお茶碗を見つめる。
卵かけご飯か納豆ご飯を食べたのだと思う。
納豆の匂いはないから、卵かけご飯かな?
私は、お皿を洗ってからお湯を沸かす。
最近は、朝御飯がわりにこの苦い漢方を飲んでいる。
ドラッグストアで、店員さんに勧められたけどあってないかも知れない。
これを飲みきったら、また聞きに行こうかな。
苦い漢方を飲み終わってから、家をの片付けをして洗濯を干す。
そんな感じで、過ごすだけで……。
あっと言う間に1時になっていた。
朝6時に起きれなくなった代償は大きい。
私は、急いで用意をする。
服を着替えて、化粧をさっとしてから家を出た。
美奈子に言われた待ち合わせ場所に到着した。
「久しぶり。りりちゃん」
「美奈子?元気にしてた?」
「元気、元気。りりちゃんは、更年期?」
「うん。ちょっと体調優れなくてね」
「まあ、子なしあるあるよね」
「美奈子も?」
「うちも子なしだからねーー。ここのパスタ美味しいのよ。食べれる?」
「うん。漢方は飲んでるからね。この時間は、わりと調子いいかも」
「そっか、そっか。じゃあ、食べながら話そう」
私は、美奈子の言われてパスタ屋さんに入る。
写真に映るパスタは、どれも美味しそうだ。
妊活をやめた私としては、何でも食べれて嬉しい。
だけど、どこか……。
寂しくて、悲しかった。
「どれにする?」
「ミートスパゲティにしようかなーー。家で作るより美味しいだろうしね」
「じゃあ、私もそれにしよう」
店員さんがやってきて、美奈子がミートスパゲティのランチを2つ注文してくれた。
私達は、ミートスパゲティの到着まで話をする。
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