sideりりまる 一生の友達と言った理由

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sideりりまる 一生の友達と言った理由

「ぼんやりして、大丈夫?」 「あっ。ごめんね」 ミルクティーをかき混ぜながら私は、美奈子との事を思い出していた。 約束の日は、明後日で……。 思い出したのが、ついさっきで。 酔っている優ちゃんと楽しくお話する桜木君を見て……。 私も桜木君みたいな友達が欲しいと思った。 それで、桜木君がトイレに行ってる間に鍵をわざと盗んだのだ。 「あのさ、桜餅君……」 「君はいらないよ」 「あっ、桜餅」 「何?」 「桜餅は、不倫したいと思ったりする?」 「ふ、不倫?!ま、まさか、そんな事思ったりしないよ。あっ、でも、俺はりりまるに告白したわけで。下心が普通にあったわけだよな」 桜木君は、あたふたと焦っている。 「お待たせしました。チョコレートパフェになります」 「ありがとう」 「ご注文の商品は以上になります。ごゆっくりお過ごし下さい」 私は、店員さんに軽くお辞儀をする。 「そんな深刻に考えないで」 まだ、テンパッてる桜木君に笑いかけた。 「ごめん。何て言うか……。不倫するとかまで考えてなくて告白したのかって思ったら。俺って我ながら馬鹿だなって思っちゃって」 「じゃあ、私と体の関係は持ちたくなかったんだ?」 「えっ……あっ!!そういうのは……」 「目が泳いでるよ!桜餅」 「あっ、すみません。持ちたいです。そりゃあ、男だから当たり前っていうか……。実際、したいですよ。今だって、普通に……。でも、先輩を裏切りたくはなくて。だから、二度と家には行かないつもりで……」 桜木君は、困ったように眉を寄せたり頭を掻きながら話をしていた。 【素直でいいやつ】 優ちゃんが言った言葉の意味がわかる。 「もういいよ。好きだって言ってくれて嬉しかった。桜餅を初めて見た時に仲良くなりたいって思ったから」 「ほ、本当に言ってる?」 「うん。本当だよ」 「それは、嬉しい。あのさ、りりまる……さん」 「さんはいらないよ」 「だよね。りりまる。この気持ちをちゃんと消すから……。だから、もう少し待ってて欲しい」 「無理矢理消さなくていいよ。無理にしちゃうと辛いだけだよ」 「わかってる。だけど、俺が気持ちを持ってたら……。先輩にも妻にも申し訳ないから。だから、一年。ううん、半年以内には消すから。いや、もっと短くないと駄目か……」 「もっと短かったら、桜餅が苦しんじゃうよ。半年でも、一年でも、三年でも……。私の気持ちは変わらないから、ゆっくり手放してくれていいよ」 桜木君は、一瞬寂しそうに目を伏せたけど……。 すぐに笑って、「わかった」と答える。 もしも、セカンドパートナーを選ぶなら桜木君みたいな人がいい。 「これ食べ終わったら帰ろうかな」 「あっ、そうだね。先輩が起きてるかもしれないから」 「うん。そうだね」 私は、チョコレートパフェを食べ始める。 甘いクリームと甘いチョコレートに包まれている酸っぱい苺とキウイ。 甘酸っぱい。 いじめられていた私は、青春なんてなかったから……。 優ちゃんと桜木君が羨ましかったのかな? 「りりまるって、モテたでしょ?」 「えっ?モテないよ」 「嘘だ。昔も、綺麗だったでしょ?今と変わらなかったんじゃない?」 「変わるよ。もう、おばさんだし」 「おばさんだって、俺は思わないよ」 少しだけ、頬が赤く染まる。 こんな会話、テレビドラマでしか見た事ないかも。 やり取りは、おばさんの会話だけど……。 話してるテンポや雰囲気は、 「アオハルーー」ってこないだ加藤凪沙(かとうなぎさ)ちゃん演じる夢見円香(ゆめみまどか)が叫んでいた言葉が浮かんでくる。 【夢見円香は、どうやら岬君が好きらしい】ってタイトルだった。 あのドラマ楽しくて、大好きで。 私にも、こんな青春があったらって思ったんだよね。 「自分の事、おばさんだって言わないでよ。俺だっておじさんだし。だけどさ、年齢なんか関係ないよ。だから……」 「桜餅は、深刻に考えすぎだよ」 私は、桜木君に笑いかけた。 そう言えば、あの日もこんな風に怒られてたよね。 「花岡先輩にいつもそれ怒られてばっかだよな。俺……」 「あーー、やっぱり!クリスマスパーティーの時も怒られてたよね」 「怒られてた、怒られてた。俺、いっつも怒られるんだよね。桜餅、深刻に考えすぎだって……。やっぱり、夫婦って似てるんだね」 桜木君の言葉にドキッとした。 私、何してんだろう。 41にもなって、優ちゃんの後輩を騙すような事して……。 ここにいて……。 「そろそろ。終電になっちゃうよね。帰ろう」 「えっ?タクシーでも大丈夫だよ」 「ダメダメ。そんなのもったいないから……」 一秒でも、早く。 この場所を去りたくて、私は鞄を取ってコートを着る。 「俺が払います」 「いいよ」 「駄目だよ。男だから!!」 「わかった、ありがとう」 「はい」 桜木君がお金を払ってくれる。 私、ちゃんと付き合ったの優ちゃんが初めてだ。 いじめられてたせいで、人に嫌われたくなくて。 いつも、誰かの顔色伺って。 高校の友達に紹介された人と付き合わされて……。 バイト先の仲良くなった人の紹介された人と付き合わされて……。 自分で、誰かに恋をして選んだのは優ちゃんが初めてだった。 優ちゃんが初めて三ヶ月以上続いた人で……。 だから、一生優ちゃんと生きてくって決めた。 「ごちそうさま」 「いえ、いえ」 「じゃあ、気をつけてね」 「あの……。りりまる」 「えっ……」 桜木君の手は、思ったより暖かい。 セカンドパートナーをもし選べるなら、私は桜木君がいい。 だけど、きっと無理。 わかってる。 明後日行っちゃ駄目な事ぐらい。 多分、美奈子は私を誰かとくっつける。 だって、美奈子はいつだって……。 自分だけが、悪者になるのを嫌うから。 「ご、ごめん。泣かせるなんて思わなかった。嫌だったよね……ハンカチ、ハンカチ……」 「だ、大丈夫。気にしないで。あっ、私。帰らなきゃ……。それじゃあ、気をつけてね。桜木君」 「えっ……」 私は、涙を拭いながら走り出した。 美奈子と会う事を決めたのは、他でもなく自分なのに……。 何で、泣いたりなんかするのよ。 私が泣いたせいで、桜木君は傷ついた顔してたじゃない。 馬鹿じゃないの、私。
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