君は月のよう

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君は月のよう

君の笑顔を手に入れるのに僕は何を犠牲にしても良いんだ 僕が何を手放しても犠牲にしても君は微笑むばかりで湖面に映る月のようにそこに映るのに手を付ければ姿を変えて溶けるように消えてしまうという表現が合うように君は目の前から消え、そして恋い焦がれる熱が治まらぬうちにまた現れる 暗い闇の中で輝く星など塵のように感じるほど君は輝いている、けして側にはいない、触れる事ができるのは君を写した紙や画面ばかりで近づく事さえ恐れ多くて君と触れ合えるのは君のもとに行く事を許された人間のみ、宇宙服さえ着ることのできない僕は、湖面という名の画面に触れるだけ、ブロマイド、写真集、ライブに朗読会、どれも遠くから君を見るばかりで握手会という月行きの切符に喜んでも滞在時間は短く、君には僕は塵芥の一人だろう、君の笑顔は光る月の正面のよう、知ってるかい?地球から月は正面しか見えないんだ、君の裏なんて考えるだけ馬鹿らしいだろうけどきっと君には僕とその他大勢が同じ顔に見えているだろう、 CD、DVD、写真集、自伝にアクスタやキーホルダー何でも買うよ、君のためなら、いくらでも貢ごう君のためなら、君が幸せでいることが 君が笑顔で笑う事が僕らの幸せだから、湖面と触れ合う程度の握手会で言葉も紡げず君の前から流される僕は、夢のような時間から目覚めれば君はまた夜空で煌々と輝く月のように優しい笑顔で僕等を導き生かしてそして活かしてくれる、誰の物にもならない天上の月のような女神は今日も僕等に笑顔をくれる、僕の月、僕の道標、生きることの意味を働くことの意味を君が教えてくれる 全ては君のため、輝き微笑む君のため、愛しい月よ、明かりのないこの人生で指標にするのは君だけ、真っ暗な空で「進むのはこちらだ」と輝く月、触れる事ができない、誰の物にもならない愛しい月よ、君がいるからこの理不尽な世界でも、この虚構のような世界でも生きていける、暗い道さえ彩られる 存在してくれてありがとう、生まれてきてくれてありがとう、メディアという空に浮かんでくれてありがとう、近づけなくてもいい、認知されてなくてもいい、美しい月よどうか何時までも輝いて 【〇〇さんできちゃった結婚!お相手は一般男性】 どうして!!! どうしてだ!!! 誰の物にもならない空で輝いていた月はいつの間にか地球に落ちてただ輝く宝石になってしまった。金を払えば手に入るそんな距離に感じてしまう 画面に映る君はもう月のような輝きなんてない、まるで普通の人のような笑顔で笑う君 誰の物にもならない天上の存在で居続けて欲しかったのに、どうせなら星の様に輝く存在と関係を持ってくれたならもっと気分も違ったのにどうしてこちら側の人間なんだ!どうして空で輝き続けてくれなかったんだ! 僕はこれから何を指標に生きれば良いんだ、君がいるから生きたのに 君がいるから動けたのに、 薄汚いこの世界で唯一美しく輝く月が落ちてしまった絶望感はきっと君にはわからないだろう、 僕の物にならないなら誰の物にもならないで欲しかった。みんなの君で居続けて欲しかったのに。そんな男よりもきっと僕の方が君に全てを捧げていたのに。僕の物にならないのならせめて芸能界で誰の手にも届かない美しい天上の月として輝いていて欲しかった。 暗い部屋でテレビを付ければ君の記者会見、胸が苦しい、息が詰まる、君はもう誰かの物なのだと思うだけで僕は絶望に襲われる 「素敵な人なんです」 まっすぐカメラを見て、ゆっくり会場中に目を向けながら彼女は言う 「私、幸せなんです」 そう言って微笑む笑顔は今までで一番輝いていて あぁずるいよ、ずるいよ僕の月、そうか君はいつも太陽を見て微笑んでいたんだね、君は太陽に近づいて宝石に変わったんだねそしてまた夜空に星として瞬いている、いや、僕にとって君が月であることは変わらないかもしれない だって君の笑顔は前にも増して輝いているから
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